不動産売却をおこなうときは複数の書類が必要になりますが、特に売却を初めて経験する人の場合、必要書類がわからず手続きのイメージがつかないこともあるでしょう。
売却が完了までの期間に、書類を提出するタイミングがいくつかあるため、そのときどきにあわせた準備が必要となります。また、必要書類によって入手先も変わるため、スムーズな売却を実現するには、事前に把握しておくことが重要です。
そこで本記事では、不動産売却の流れにおいて、各タイミングごとで必要となる書類や書類に関する注意点を解説します。必要書類を正しく把握してスムーズな売却をおこなうためにも、ぜひ参考にしてください。
- 不動産査定から売却までに必要となる書類
- 不動産売却後の確定申告で必要となる書類
- 必要書類の取得・提出に関する注意点
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目次
不動産査定時に売り主が必要な書類
査定時に売り主が揃える書類を以下の表にまとめました。
書類名 | 取得方法 | 必須もしくは任意 |
登記識別情報もしくは登記済権利証 | 購入時に法務局より発行される | 必須 |
不動産の図面・仕様書 | 住宅メーカー | 任意 |
固定資産税納税通知書 | 不動産所在地の市町村役場 | 任意 |
不動産売却において最初におこなうのは、不動産仲介会社への物件の査定依頼です。売却をするうえで、「価格設定が安すぎて損をした」「高価格に設定しすぎて買い手が見つからない」という状況を避けるために適切な査定金額を算出してもらいます。
査定方法には机上査定と訪問査定の2種類がありますが、実際に売りに出す際には訪問査定がおすすめです。机上査定は物件情報をもとにおおよその価格を算出するため、実際に現地を訪れる訪問査定と比べ精度が劣ってしまうためです。
なお、不動産会社によって査定時に要求される書類に違いが発生することもあるため、訪問査定の前に不動産会社に確認をしておくとよいでしょう。具体的に必要となる書類を説明していきます。
登記識別情報もしくは登記済権利証【必須】
登記識別情報とは不動産の所有者を明確にするための書類です。不動産購入時や新築建設時において、法務局での登記手続きが完了した際に登記名義人へ交付されます。
登記済権利証とは不動産登記事務が電子化される以前に登記名義人に交付されていたもので、登記識別情報同様に不動産の所有権を示す書類です。
不動産売却時に必須となる書類ですが、再発行ができないため注意が必要です。万が一紛失してしまった場合は、司法書士や公証人によって本人確認情報を作成してもらい法務局へ提出しましょう。提出した本人確認情報が認められることで、登記識別情報もしくは登記済権利証の代わりとなります。
建物の図面・仕様書
不動産の図面や設備の仕様書は必須ではありませんが、物件情報の詳細が把握できることでより正確な査定が可能となります。法務局の窓口を訪ねるか、公式ホームページより郵送で取り寄せることが可能です。
ただし、建物図面は床面積や形状などを示すものであり、間取りや設備を知ることができません。物件購入時のパンフレットなどが手元にある場合は、こちらを提示したほうが不動産会社にとってわかりやすいケースが多いです。
固定資産税納税通知書
固定資産税納税通知書は毎年1月1日時点の不動産所有者に市町村役場から送られる書類です。この書類には不動産の建物・土地に課される固定資産税の納税額や評価額が記載されています。
また、不動産売却にともなう移転登記をおこなう場合は登録免許税が発生します。登録免許税は不動産価格に合わせた金額が課されるため、固定資産税評価証明書がないければ計算ができません。
固定資産税納税通知書も紛失した場合は再発行ができないため注意が必要です。仮に紛失した場合は、市町村役場の窓口で代用となる固定資産税評価証明書を発行してもらいましょう。
不動産媒介契約で売り主が必要な書類
次に不動産会社と媒介契約時に必要となる書類について解説します。売り主が準備すべき書類を以下にまとめました。
書類名 | 取得方法 | 必須もしくは任意 |
本人確認書類 | 市町村役場の窓口 | 必須 |
認印 | – | 必須 |
地積測量図もしくは境界線確認書 (土地が含まれる場合) |
法務局 | 必須 |
建築確認済証(一戸建ての場合) | 建築会社 | 任意 |
ローン残高証明書またはローン返済予定表 | ローン借り入れしている銀行 | 任意 |
不動産会社が算出した査定価格に納得できて売却活動を始める際は、仲介依頼をするための媒介契約を結びます。媒介契約時に必須となるものは、本人確認ができる書類と印鑑、測量図もしくは境界線確認書です。
本人確認書類【必須】
本人確認書類とは売り主が本人であると確認できる書類です。
- 運転免許証
- パスポート
- 健康保険証
- マイナンバーカード
- 住民票
媒介契約時には上記のような身分証明書として認められているような書類を、依頼者本人であることの確認のために提出します。本人確認書類は媒介契約時以外にも売買契約、所有権移転登記の際に必要となるため、いつでも提示できる準備をしておくとよいでしょう。
売却する不動産が複数人で所有している共有名義の場合は、共有者全員の合意を得なければ売却することができないため、共有者全員分の本人確認書類が必要です。
認印【必須】
媒介契約書締結の際は契約書に署名捺印をします。捺印時は実印である必要はなく、印鑑証明書も用意する必要はありません。しかしシャチハタはNGとなっているため注意が必要です。
地積測量図もしくは境界線確認書【必須】
近隣住民とのトラブルを未然に防ぐために必要となる書類となっており、土地面積や隣接しているすべての境界線が確定されたものです。
この確定測量図や境界線確認書があることで、売却する不動産の範囲が間違いないという証明となります。買い主にとっても安心材料の1つとなるため、書類がなく土地の境界線が曖昧となっている場合は、取得する必要があります。
書類は法務局の窓口、もしくは郵送による取得が可能ですが、書類がない場合は土地家屋調査士や測量士に依頼する必要があります。依頼からおこなう場合は、2~3ヵ月かかる可能性があるため、早めの準備が必要です。
建築確認済証
住居を建てる際に提出する建築確認申請書の内容が、建築基準法にしたがって設計されているかを証明する書類です。
建築確認済証は一戸建ての新築時に建築会社から受け取ることが一般的となっており、紛失した場合は再発行することはできません。仮に紛失して手元にない人は、市町村の窓口で建築概要計画書を閲覧をするか、台帳記載事項証明書を発行してもらうことで代用が可能です。
ローン残高証明書またはローン返済予定表
売却する不動産の住宅ローンを返済中の人は、ローン残高証明書またはローン返済予定表を準備する必要があります。住宅ローンが残っている不動産を売却するためにはすべての返済を終えることが必須です。
提出する書類としての用途だけではなく、不動産売却によって完済できるか確認するためにも大切な書類となります。売出し価格を決める要素の1つともなるため、書類用意したうえで不動産会社の担当者にも伝えるとよいでしょう。
ローン残高証明書は年に1回、借り入れをおこなった金融機関等から郵送されます。基本的に10月~1月の間に届くことが多いですが、直近で必要にも関わらず紛失してしまった場合は、電話や窓口からの相談で再発行が可能です。
不動産売却活動で必要な書類
書類名 | 取得方法 | 必須もしくは任意 |
マンションの管理規約や使用細則 | マンションの管理会社に依頼する | 必須 |
マンションの重要事項に関する調査報告書 | マンションの管理会社に依頼する | 必須 |
上記の2点はどちらもマンションの売却の場合にのみに必要な書類です。どちらも管理会社が保管しています。
マンションの管理規約や使用細則【必須】
マンションは家族形態や生活リズムの違う人たちが住む共同住宅です。そのため、未然にトラブルを防ぐために独自のルールを定めています。また、管理費用未払いなどの金銭面に関してのルールも定められていることも多いです。
管理規則や使用細則は買い主側にとって重要な情報源ともなるため、準備しておくことでスムーズな売却につながる可能性があります。購入時に買い主に渡されている書類ですが、紛失している場合はマンションの管理組合に連絡をして入手しましょう。
マンションの重要事項に関する調査報告書【必須】
マンション売却時のみ必要な書類として、重要事項に関する調査報告書があります。
管理費の滞納額や修繕積立金総額・大規模修繕の予定や専用使用部分のルールや費用から過去のトラブル例など、マンションの管理規約には記載されていない詳細な管理情報が記載された書類です。
重要事項に関する調査報告書は、仲介会社が作成する重要事項証明書に明記すすべき事項が多くあります。そのため、売り主側から仲介会社へ提出が必要です。
不動産売買契約で必要な書類
物件の買い手が見つかり売買契約を締結する際は、以下の書類が必要になります。
書類名 | 取得方法 | 必須もしくは任意 |
実印と印鑑証明書 | 市町村役場 | 必須 |
印紙もしくは印紙代 | 郵便局もしくは不動産会社で用意 | 必須 |
銀行口座のわかるもの | 金融機関 | 必須 |
住民票 | 市町村役場もしくはコンビニのマルチコピー機 | 任意 |
抵当権抹消書類 | 法務局と金融機関 | 必須 |
実印と印鑑証明書【必須】
売買契約締結時には売買契約書に署名と捺印をおこないます。不動産会社との媒介契約時には認印で問題ありませんでしたが、登記に関する書類は実印が必要です。実印での捺印をおこなう場合、証明できる印鑑証明書も同時に必要です。
この際に提出する印鑑証明書は、市役所の窓口で発行してもらいますが、3ヵ月以内のものを用意する必要があります。
印紙【必須】
不動産売買契約書は売買代金に応じた印紙税が課されます。収入印紙を購入し添付し、消印を押すことで納税が完了します。この消印は売買契約書と印紙が使用済みであることを証明しており、一度押すと収入印紙は再利用できなくなります。
銀行口座のわかるもの【必須】
決済方法には銀行振込と現金手渡しの2パターンがありますが、不動産を売却した代金は大金が動くため、一般的には銀行口座へ振り込まれます。買い主の希望によっても変わるため、両者の間で決定しておく必要があります。
メモとして控えておいても問題ありませんが、間違いが発生しないように、支店名や口座番号がわかるように通帳や通帳印も用意しておくことが望ましいです。
住民票
住民票は不動産登記上の住所と売り主の現住所が異なる場合に必要になります。住民票は発行から3ヵ月以内のものが必要で、お住まいの市町村役場で入手が可能です。
市町村役場以外にも入手可能とんっており、郵便局で定額小為替を購入し、市町村役場へ送付することで住民票を郵送してもらえます。
また、マイナンバーカードや住民基調台帳カードを所有する人であれば、コンビニエンスストアのマルチコピー機でも入手可能です。市町村によっては対応不可の場合もあるため、各地域の公式サイトから確認するとよいでしょう。
抵当権抹消書類【必須】
不動産購入で住宅ローンを利用した場合は、完済して抵当権抹消しない限りは抵当権が消えません。売却する場合は抵当権を抹消する必要があり、その際に必要な書類は下記のとおりです。
- 登記申請書
- 本人確認書類
- 委任状
- 金融機関からもらう解除証明もしくは弁済証書
- 抵当権設定契約証書
- 代表者事項証明書または登記事項証明書
上記リストの内、代表者事項証明書または登記事項証明書は発行から3ヵ月以内である必要があるため注意してください。
不動産売却後の確定申告で必要な書類
売却が完了した翌年度に確定申告をおこないます。確定申告で必要な書類は以下のとおりです。確定申告時期になって焦らないためにも、あらかじめ準備をしておきましょう。
書類名 | 取得方法 | 必須もしくは任意 |
確定申告書 | 税務署や市役所 | 必須 |
売買契約書のコピー | 自分で用意 | 任意(ないことで税金が増える可能性がある) |
経費の領収書 | 自分で用意 | 任意(ないことで税金が増える可能性がある) |
確定申告書【必須】
不動産を売却して譲渡所得があった場合や損失が出た場合は確定申告をする必要があります。損失が出た際の申告は任意となりますが、申請をすることで他の所得と相殺が可能となり、課税額を減らすことができます。
確定申告の時期は売却をした翌年の2月16日から3月15日が期限となっており、期日内での申告ができなかった場合は延滞税が発生するため注意が必要です。
確定申告をおこなわないと利用できない特例や税金の控除もあります。ここで使用する確定申告書とは、確定申告書B様式と分離課税用の確定申告書第三表、譲渡所得の内訳書を指します。
e-Taxによりオンラインでの申請が可能ですが、不明点が多い場合は税務署の窓口を訪ねてみるのもよいでしょう。
売買契約書のコピー
不動産売却を完了させるには売買契約書の締結が必要となりますが、確定申告をする際はそのコピーを用意しましょう。売却したときの売買契約書とあわせて購入時の契約書も必要です。
2つの売買契約書の金額を確認することで取得費用を計算できますが、見つからない場合は売却額の5%で取得費用を計算することになります。そのため、支払う税金の額が増える確率が上がってしまいます。
売買契約書以外にも購入価格を証明できる書類があれば、取得費として認められるケースもありますので、一度税務署に相談してみましょう。
経費の領収書
不動産購入時と売却時にかかった費用の領収書も用意しましょう。経費としてあげられるのが、仲介手数料・不動産取得税・印紙代・登録免許税などです。
これらの領収書がない場合は、購入時の売買契約書がないケースと同様に取得費に含められる部分が少なくなり、課される税金が多くなります。
その他特殊ケースで必要な書類
ここでは売却における特殊なケースで必要になる書類を解説します。ケース別に必要な書類を以下の表にまとめました。
特殊なケース | 必要な書類 | 取得方法 | 必須もしくは任意 |
成年被後見人が売却するケース | ・申立書 ・収入印紙 ・不動産の全部事項証明書 ・不動産売買契約の案 ・処分する不動産の評価証明書 ・不動産業者作成の査定書 |
・市町村窓口 ・不動産会社 ・推定相続人 |
必須 |
法人が売却するケース | ・登記事項証明書 ・登記済権利証 ・印鑑証明書 ・固定資産税納税証明書 ・代表または取引担当者の身分証明書 |
・法務局 ・市町村役場 |
必須 |
相続財産管理人が売却するケース | ・選任審判書 ・印鑑証明書 ・実印 ・不動産売却の許可証 |
・家庭裁判所 ・市町村役場 |
必須 |
成年被後見人が売却する場合
成年被後見人(せいねんひこうけんにん)とは、精神上の障害により判断能力に欠けると家庭裁判所で認められた人を指します。
仮に、成年被後見人の居住用不動産を後見人が売却する場合は、家庭裁判所の許可を得なければ売却はできません。居住用の不動産でない場合には許可は必要なく、一般的な不動産売却と同じ書類が必要です。
現在住んでいなくても将来住む可能性があるとされる場合は、居住用とされることに注意してください。
成年被後見人が家庭裁判所に売却の許可を得るためには、「不動産の全部事項証明書・不動産売買契約の案・処分する不動産の評価証明書・不動産業者作成の査定書」が必要です。
あわせて申立書の提出が必要になるため、こちらのページからダウンロードしてください。
法人が売却する場合
法人が不動産を売却する場合は個人が売却する場合と必要書類が異なります。
住民票は必要とされず、その代わりに法人の3ヵ月以内発行の登記事項証明書が必要です。印鑑証明書と印鑑も法人としてのものを用意します。あわせて固定資産税納税通知書、代表または取引担当者の身分証明書も準備しておきましょう。
相続財産管理人が売却する場合
財産を相続する人がいない場合や相続放棄で相続人がいない場合は、相続財産を管理する人が必要になります。家庭裁判所に申し立てをして相続財産管理人の立場となる人を決定しますが、担当となった人が不動産売却をおこなう場合に必要な書類は下記のとおりです。
- 選任審判書
- 印鑑証明書
- 実印
- 家庭裁判所による不動産売却の許可証
不動産売却時の必要書類に関する注意点
最後に不動産売却で必要な書類に関する注意点を解説します。
- 複数の不動産会社に査定依頼する提出書類は同じものにする
- 持っている書類はすべて提出する
- 書類のミスを防ぐ
不動産を売却する際には複数の不動産会社に査定を依頼することがあります。その場合は提出する書類はすべて同じ条件や内容のものにしましょう。条件や内容が変わると査定価格の比較が難しくなります。
また、不動産に関する書類はすべて提出することを心がけましょう。必須書類以外にも不動産に関する書類があれば査定の際や売却活動をしている場合に役立ちます。査定価格が上がることもあるため、所有する書類を一度整理しておくのがおすすめです。
複数の種類の書類が必要となり、初めての売却となる人も多いことから、「発行する書類を間違えた」というケースも少なくありません。提出する書類はもれなく揃える必要があり、ミスにより売却の手続きができなくなる可能性があります。早めの準備や相談を心がけて売却に備えていくとよいでしょう。
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まとめ
不動産売却には多くの書類を揃えていく必要があり、売却の経験が少ない人にとっては負担に感じることも多いでしょう。そのような場合は、早めの準備が必要となるため、本記事で解説した必要書類や取得方法をぜひ参考にしてください。
また、個人での情報収集で対応しきれないケースもあると考えられます。自分一人では解決できない場合は、不動産会社の担当者に相談するのが一番の方法といえます。本記事もあわせて確認して、スムーズな売却へとつなげてください。