住み替えや相続、資産整理などで住居の売却が必要となった際は、不動産見積もりを依頼して、物件にいくらの価値があるのか算出する必要があります。
しかし、不動産を売却する経験自体、人生において少ないため、どのような手順で不動産見積もりを依頼すべきか迷っている人もいるでしょう。
そこで本記事では、不動産見積もりの種類やおすすめサイトについて紹介します。無料と有料見積もりの違い、依頼する流れについて解説するので、不動産の価値を正しく見積もって売却につなげるためにもぜひ参考にしてください。
目次
不動産見積もりとは
不動産見積もりとは、戸建てやマンション、土地などを売却するとき、どの程度の価格になるのかを算出することを指します。不動産はすべて一点物で定価はなく、売り出し価格で購入希望者が納得できたら売買は成立します。
見積もり額は売り出し価格を決める参考になり、スムーズな売買にするための重要な要素です。相場より高くても低くても不動産売却に悪影響を与える可能性があるため、慎重に進めなければなりません。
以下の見出しでは、無料と有料の不動産見積もりについて、それぞれ詳しく解説していきます。
関連記事:戸建てを売却する相場はいくら?調べ方や築年数による違いも解説
無料の不動産見積もりとは
無料の不動産見積もりとは、不動産会社がおこなっている査定方法です。不動産会社は、売買が成約したときの仲介手数料が主な収益源となります。
売却してくれる人を見つける必要があるため、無料で見積もりをおこなっており、算出する金額は不動産会社によって変わります。場合によっては100万円以上の価格差が出ることもあるでしょう。
無料の不動産見積もりのなかでも種類がわかれており、机上(簡易)査定、訪問査定、不動産一括査定の3つがあります。以下で3つの査定の方法について解説するので、それぞれの特徴を理解してから利用しましょう。
関連記事:不動産売却するならどこがいい?大手と中小の違いや不動産会社のおすすめの選び方を解説
関連記事:【2024年】不動産仲介の売買実績ランキングTOP10!信頼できる大手不動産会社の特徴を徹底比較
机上査定(簡易査定)
机上査定とは、次の物件のデータのみで見積もり額を出す方法で、簡易査定とも呼ばれています。
- 物件の種類(戸建て・マンション・土地など)
- 住所
- 築年数
- 面積
- 間取り
- 過去の類似物件での売却価格
物件のデータのみで算出するため、不動産会社に依頼すると早ければ当日に結果が受け取れることができます。欠点は物件の傷み具合などが反映されず、実際の売却価格と差が出やすい点です。
実際に売却を進める際は、次に紹介する訪問査定が必須となるため、机上査定は大まかな見積もり金額を知るのに使えると覚えておくとよいでしょう。
訪問査定
訪問査定は、机上査定で使ったデータに加え、不動産会社の担当が物件や現地の状況を確認して見積もり額を出す方法です。机上査定より実際の売却価格に違い結果を期待できます。
訪問査定では、現地で調査があるため机上査定より時間がかかります。スムーズに進んで1週間程度、訪問の日程調整がうまくいかないと、その分だけ延びてしまいます。
不動産の売却活動を進めるうえでは欠かせない査定方法となるため、売却活動を早期に進めたい人は、訪問査定から始めてもよいでしょう。
不動産一括査定
不動産一括査定は、不動産一括査定サイトを使い、1度の情報入力で複数社へ同時に机上査定や訪問査定を依頼する方法です。複数社の不動産見積もり結果を受け取ることで、最新の相場を把握することができ、査定結果の妥当性を判断できるようになります。
個別で不動産見積もりを依頼するより手間はかからず、依頼先も入力する物件の種類や立地から、自動的にピックアップしてくれます。机上査定であれば、その場ですぐに査定依頼をすることができるため、数時間から数日程度で不動産会社からの査定結果を受け取れるでしょう。
机上査定をおこない気になる企業があった場合に、訪問査定を依頼することで、スムーズな売却活動につながります。
関連記事:不動産一括査定サイトのおすすめランキング!不動産売却におすすめの人気16選を比較し選び方を紹介【2024年最新】
有料の不動産見積もり
有料の不動産見積もりとは、不動産鑑定士による物件の鑑定です。国家資格を持つ人に限定された独占業務であり、誰に依頼をしても公平な評価基準で価値を算出してくれます。
裁判での証拠資料など、第3者に不動産見積もり額を提示する際に有効な資料となるため、離婚の財産分与や遺産相続で、トラブルが起きそうなときにおすすめできる査定方法といえます。
鑑定は不動産鑑定士しかおこなえず、業務の報酬が必要のため有料となります。相場は20~30万円程度で、見積もり額が高額になるほど報酬も上がる傾向です。
不動産見積もり額の調査ができるサイト
無料でも有料でも不動産見積もりは依頼が必要で、すぐに価値だけを知りたい人には手間と感じるかもしれません。そこで、自身で調査ができるサイトを5種類紹介します。使い勝手がよいと思うものを選び、利用してみましょう。
AIツールを利用できるサイト
AIツールを利用できるサイトとは、物件の情報を入力すると即座に見積もり額を算出してくれるサイトです。AIは過去の取引データを学習・分析し、机上査定とは異なり不動産会社の担当社をとおすことなく結果がわかります。
24時間いつでも利用でき、蓄積されたデータで分析結果を示してくれるサイトもあります。ただし、不動産会社による査定と比べると、学習させられないデータや、住みやすさなど数値化しにくい評価があることで、精度が落ちるのも事実です。
あくまでも参考相場価格を知るのにおすすめのサービスといえるでしょう。以下ではAI査定ができる4つのおすすめサイトを紹介します。
サイト名 | HowMa | IESHIL(イエシル) | 三井のリハウス | SRE不動産 |
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対応物件 | ・マンション ・戸建て |
マンション | マンション | マンション |
対応エリア | 全国 | 東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県 | 北海道・宮城県・茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・岐阜県・愛知県・三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・岡山県・広島県・福岡県 | 東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県 |
特徴 | 登録物件の最新の査定額を知らせてくれる | 約9,000万件のデータを使い高精度を期待できる |
業界トップクラスの売買実績に基づくデータで信頼度高い | AIはソニーグループの技術で開発 |
公式サイト |
AI査定については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:マンション査定はAI(自動)でできる?おすすめサイトやメリット・デメリットを解説
路線価図
路線価図とは、国税庁が運営しているサイトで、道路に面する宅地の価値を1平米あたりの土地の単価で知ることができます。年度ごとに最新情報が更新され、路線可が設定されている道路に面している場合に確認可能です。
基本の計算方法は次のようになっています。
路線価図は実際に市場で取引される金額の80%程度となっているため、100%時の値を計算することで、より正確な価格を知ることができます。年度によって路線価の補正があるため、最新の情報をもとに計算してください。
土地総合情報システム
土地総合情報システムは、国土交通省が運営する不動産取引価格を検索できるサイトです。取引当事者へのアンケートを集計し、データは四半期ごとに更新されます。
立地や築年数、間取りなどで不動産見積もりしたい物件の類似例を探し、平均をとって相場を調べます。2005年7月からのデータが蓄積されているため、年度ごとの相場を集計すると、価格の推移もわかるでしょう。
大まかな相場だけを知りたい人は、土地取引価格の概況もチェックしてください。地域ごとの平均値や中央値が四半期ごとにグラフ化され、売却タイミングをはかる参考になります。
不動産ポータルサイト
SUUMOなどの不動産ポータルサイトを見ることで、似た物件の売り出し価格を調べられます。中古の戸建てやマンションの購入で、細かく条件を指定できるため、似た物件探しの手間はかかりません。
不動産ポータルサイトごとに、登録されている物件は異なります。反対に、複数サイトで同じ物件が掲載されているケースも考えられるため、複数サイトで収集すると、最新の売り出し相場を精度よく把握できます。
似た条件の物件が見つからない場合は、残りの4種類の方法を試してください。不動産ポータルサイトでは売り出し中の物件しか検索できないため、複数サイトで調べても十分なデータが集まらない可能性があります。
レインズマーケットインフォメーション
レインズマーケットインフォメーションは、直近1年で実際に売買されたマンションや戸建ての売却価格を調べられるサイトです。国土交通大臣に指定された不動産流通機構が運営し、データは随時更新されています。
物件の価格帯はグラフ化され、戸建ては土地面積と価格、マンションは築年数と単価の相関が一目でわかります。指定した地域での直近1年の取引が100件未満の場合は、検索結果に表示されないため注意してください。
不動産見積もりまでにしておく準備
売却までをスムーズに進めるため、不動産見積もりの時点で次の3つの準備しておくのがおすすめです。
- 見積もりや売却活動で必要になる書類の用意
- 住宅ローンの残債の確認
- 自身での不動産価格の把握
それぞれの詳細やこれらが必要な理由について解説していきます。
見積もりや売却活動で必要になる書類の用意
基本的には売却活動で必要となる書類のため、初めての不動産見積もり時にはそろっていなくても問題ありません。ただし不動産見積もり時点で用意しておくことで、より正確な情報をもとに価格を算出できます。
- 購入時の売買契約書、重要事項説明書
- 土地の公図、測量図
- 登記簿謄本、登記識別情報
- 身分証明書
- 住民票
- 印鑑証明書
- 固定資産税納税通知書
- リフォームや設備交換のがわかるもの
住民票や印鑑証明書は、不動産会社が発行から3ヵ月や6ヵ月以内ものと指定されるケースがあるため、早すぎる準備するのは避けましょう。不動産見積もりする予定の物件がマンションの場合は、管理規約や分譲時に入手したパンフレットもあるとよいです。
手元に公図や測量図、登記簿謄本がない人は、法務局で発行してください。オンラインでも請求はでき、窓口で手続きをするより手数料は安くなります。
不動産売却における必要書類については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:不動産売却の必要書類は?タイミングごとに揃えるべき書類や取得方法を解説
住宅ローンの残債の確認
住宅ローンが残っている物件は自由に売却できないため、売却価格で完済できるか判断する必要があります。
滞りなく返済をしているならば、融資を受けたときに郵送された返済予定表から推測できます。現時点での残債は、融資を受けている金融機関のインターネットバンクのサービス、もしくは窓口で残高証明書を発行してください。
売却価格では不足が予想される人は、預貯金での補填や住宅ローンの借り換えも検討しておきましょう。ただし、無理な完済をすると将来の生活が苦しくなる可能性があるため注意が必要です。
関連記事:住宅ローンはどこに相談すべき?相談窓口の種類と相談する際の注意点
関連記事:家の売却はローン中でも可能?5つの売却方法とオーバーローン時の注意点
自身での不動産価格の把握
不動産の価値を自身でも調査しておくと、机上査定や訪問査定での結果の妥当性を判断できます。不動産会社のなかには、顧客確保のためや人為的ミスにより、極端に高い査定額を提示されるケースもあります。
明らかに相場から離れる金額で売り出しを開始した場合、購入希望者が現れるまで時間がかかるでしょう。反対に低い金額での売り出しは、売り主の損につながります。
調査は上記で紹介したように、不動産一括査定やAI、レインズマーケットインフォメーションといった各種のサイトがおすすめです。どれも無料で利用できるため、気軽に最新の相場を調査してください。
不動産見積もり方法の選び方
不動産見積もりにはさまざまな方法があるため、どの方法を選ぶか迷っている人もいるでしょう。そこでここからは、よくある次の2パターンについておすすめの見積もり方法を解説します。
- 売却に出す場合
- 財産分与や相続をする場合
売却に出す場合
売却に出す場合は、売り出す価格を決めるために不動産見積もりの結果を使います。あくまで参考程度に使うため、無料でものでも十分です。
特に不動産一括査定であれば、不動産会社探しや査定依頼の手間を省け、サイトからいつでも申し込めます。
無料で利用できるため気軽に利用でき、複数の査定結果から最新の相場を調べることが可能です。実際に売却に進むときは訪問査定を受けて価値を精度よく把握しておくと、より売却額と近い価格を算出することができます。
財産分与や相続をする場合
財産分与や相続をする場合は、有料の不動産見積もりを選びましょう。算出された価値は裁判でも有効な資料となり、自身の要望を通しやすくなります。
依頼には数十万円の費用が必要となるため、問題が起こることなく合意できる場合は、無理に利用する必要はありません。あくまでも税務署や裁判所などの第3者に見積もり額を提示する際に利用する方法です。
関連記事:離婚時の財産分与で家の査定は必要?必要になるケースや注意点を解説
関連記事:相続不動産の査定方法とは?査定が必要な理由や評価額の調べ方を解説
不動産見積もりの流れ
不動産見積もりを依頼する方法が決まったら、実際に依頼を出しましょう。ここでは、無料と有料の場合の流れを紹介します。
有料見積もりの流れ
有料見積もりの場合、依頼の流れは次の3ステップです。
- 不動産鑑定事務所の厳選
- 費用の見積もりをしてから正式な依頼
- 現地調査後に不動産鑑定評価書を発行
不動産鑑定事務所は、実績や評判、実際に相談したときの対応を総合的に判断して、信頼できるかで厳選しましょう。費用は物件によって異なるため、あたかじめ価格を聞いたうえで、慎重に依頼を進める必要性があります。
発行される不動産鑑定評価書の価格に、法的な有効期限はありません。ただし、価値は常に変動しているため、実務的には3ヵ月程度、近隣で大きな変動がなくても1年程度と考えておきましょう。
無料見積もりの流れ
個別の不動産会社に机上査定を依頼する場合、流れは次の3ステップです。
- 査定依頼をする不動産会社を厳選
- 物件の情報を伝える
- 査定結果の受け取り
訪問査定であれば、物件情報を伝えたあとに日程を調整して不動産会社の担当の訪問が入ります。また不動産一括査定での机上査定であれば、物件の情報入力をしてからの企業の厳選という手順です。
査定結果の受け取りは電話かメールが一般的です。不動産会社によっては書類として受け取ることも可能なため、各不動産会社に尋ねてみましょう。訪問査定は手間がかかるため、机上査定で依頼先を大まかに絞り込んでから依頼するのがおすすめです。
関連記事:不動産売却するならどこがいい?大手と中小の違いや不動産会社のおすすめの選び方を解説
関連記事:不動産売却の流れとは?必要書類や契約方法など7つのステップで解説
不動産見積もりの注意点
不動産見積もりでは、希望に沿った売却につなげるためにも、以下のような注意点を押さえておく必要があります。
- 見積もり額で売却できるとは限らない
- 複数の不動産会社に見積もり依頼する際は提供情報を統一
- 見積もり額の根拠を聞く
- 見積もり額だけで依頼する不動産会社を選ばない
後悔のない不動産売却にするため、不動産見積もりを依頼する前に把握しておきましょう。
見積もり額で売却できるとは限らない
不動産見積もりは、あくまで予測の金額を算出します。そのため、提示された見積もり額で売却できる保証はなく、想定より安くになるケースも少なくありません。
不動産会社の担当の営業力、タイミング、購入希望者との交渉など、さまざまな要素が絡み合って売却価格が決まります。調べた相場で売り出しても、いつまでの売れない場合は値下げが必要です。
複数の不動産会社に見積もり依頼する際は提供情報を統一
提供する情報が統一されていない場合、判断する基準が変わり、相場の把握が難しくなります。設備の故障やシロアリ被害などを事前に把握できている場合は、早めに不動産会社に伝えておくことが大切です。
また、面積や築年数の伝え間違いもおこりえます。上記で紹介した物件に関わる書類を用意しておくと、複数の不動産会社に見積もり依頼するときに、提供情報を統一できるでしょう。
見積もり額の根拠を聞く
見積もり額の根拠は、不動産会社を信頼できるかの判断材料になります。説明を聞いても納得できる根拠が提示されあい場合は、他会社に依頼するほうが無難です。
もし相場より極端に高い・安い場合でも、根拠がある場合は売り出し価格を決める参考にしてください。安さの問題点はできるだけ解消し、高い理由は物件のアピールに使えます。
見積もり額だけで依頼する不動産会社を選ばない
見積もり額は、正式に売却を依頼する不動産会社を選ぶ基準の1つに過ぎません。次の基準も加味して、自分の希望にあう不動産会社を見つけましょう。
- 不動産売却で役立つサービスがあるか
- 口コミや評判はよいか
- 売却したい物件の取引実績があるか
- 提案内容が魅力的か
- 担当者と相性があうか
不動産会社の公式サイトや各種のSNSで情報を集め、担当者と実際に話してから、売却の依頼をしてください。想定どおりに取引できるかは、不動産会社の影響は大きいです。不動産は単価の高い商品のため、厳選によって利益が100万円以上増える可能性があります。
不動産に関するQ&A
不動産見積もりを進めるに連れて、たくさん疑問が出てきますよね。ここではちょっとした疑問に答えていきます。
複数の不動産で見積り額が異なるのはなぜ?
比較をするために、複数の不動産に見積もりを依頼すると、見積額が異なることが多々あります。
各不動産会社には、得意とするエリアや物件があり、参考となるデータも各不動産会社で異なるためです。
適確な見積もりを出してもらうためにも、自分の売りたい物件のエリアはどこの不動産会社が得意なのかを見極めておくことが大切です。
見積もりだけをしてもらうことはできますか?
もちろん可能です。
ですが、見積もりだけをしてもらうのであれば不動産一括査定サイトを使うのがおすすめです。一度の申し込みで複数の不動産会社の見積もりをもらうことができるので、時間がない方でも簡単に査定をお願いすることが可能です。
まとめ
不動産見積もりは、無料と有料の方法が存在します。売却を目的とした不動産見積もりであれば無料でよく、遺産相続や財産分与でトラブルが予想されるならば有料で依頼しましょう。
見積もり結果が妥当なのか見極めるため、自身での調査も大切です。不動産ポータルサイトやAI査定ツールを利用して、おおまかな相場価格を調べておくだけでも1つの判断基準となります。
また、希望に沿った不動産売却をおこなうためにも、押さえておくべき注意点がいくつかあります。本記事の内容を参考にして、スムーズな不動産見積もりに活かしていただければ幸いです。